狭山湖にほど近い里山に建つ家具作家のアトリエ兼住宅。既存の母屋が手狭になったため、隣に離れを建てる計画です。
この建物で重視したことは、既存の母屋との良質な付き合い方。言い換えれば、調和しつつ主張する建物をつくることです。この関係を「夫婦」に見立て、母屋を「夫」、むすひを「妻」ととらえ設計しました。
出しゃばらずに一歩引いて夫に寄り添う配置、夫より幾分低い屋根の高さ、大きな骨組みを猛々しく現した夫に対し、塗り壁の薄化粧を施して格子戸のベールを被った可憐な外観は、この家に嫁いで来た新婦の姿と考えました。
また母屋の前下がりの屋根形状を夫が新しいことに挑戦していく姿勢ととらえ、それに対するむすひの前上がりの屋根形状は、様々な困難をどんと受け止める妻の毅然とした態度を表しました。
さらに吹抜を囲む180mm角の4本の柱は、表には出さない妻の芯の強さを表現したものです。
むすひを生涯の伴侶として迎えた今後は、母屋と一緒に仲むつまじく、お互い引き立て合い、夫婦揃って歳を重ねていくことでしょう。
格子戸をくぐって中に入ると吹抜とキッチンが出迎えます。料理好きの主が酒や肴を振る舞う、この建物で最も大事な場所です。
向かって左手にはダイニング。奧の収納には大きなワインセラーも設置しました。右手は主のアトリエ。木材のサンプル、パソコン、試作品などが所狭しと並んでいます。
キッチンの奧の階段を登った2階は、吹抜に面したギャラリー。錆びた鉄板のカウンターには、今後主の作品が里山を背景に展示される予定です。
吹抜を挟んだ2つの和室は、茶室でもあり、客間でもあり、仕事場でもあり、子ども部屋でもあり…。様々な利用を想定しています。宿泊客のため、レインシャワーも完備しました。
格子戸は直射日光を柔らげて室内に採り込み、床や壁に映るストライプが四季の移り変わりや時間の変化を教えてくれます。
私たちが設計した建物に、庭では外構デザイナーが、内外様々な場所で鉄の作家が、見せ場では家具作家の主が、それぞれ彩りを与え、とても良質な空間ができあがりました。
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石嶋寿和
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- 石嶋設計室 一級建築士事務所 [ 茨城県 古河市 ]
- 私たちは建築主が描くイメージを「かたち」にすることを生業としています。大切にしていることは「ふつうであること」。それはありふれたハコを量産することではなく、建築主の想いを具現化して最適な「ふつう」を提案すること。仕事に向き合い、心を込めて紡いだ先にこそ、素晴らしい「ふつうの建築」があると信じています
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